Call​

何の由縁もなく、言葉も知らない場所で、宙を漂うようにただ歩き続けたかった。

目眩するような陽射しが降り注ぐ日には花盛りのブーゲンビリアの下をくぐり抜け、

体の冷たい冬の夜には色とりどりのネオンが連なる夜市の人いきれに紛れこむ。

都市と人間が織りなす空間は過剰なまでに色彩と陰影でごった返していて、

わたしはその中に潜り込むようにして歩く。

にぎやかな都市の光景はその裏側を意識させる。

色彩と陰影のベールをはらりとめくったら、

そこが台湾であるかないか、男と女、あなたとわたし、生き物とそうでないもの、

一切合切が綯い交ぜになった世界が広がっているのではないだろうか。

その人その物の奥底からほのかに匂い立つ微光のようなものに、

呼びかけるように、呼ばれるように、撮ってみようと思った。