call

2年以上台湾に通ったが、本当は知らない場所ならどこでも良かったのだ。

何の由縁もなく、言葉も知らない場所で、宙を漂うようにただ歩き続けたかった。

目眩するような陽射しが降り注ぐ日には花盛りの街路樹の下をくぐり抜け、

体が冷え切った冬の夜には色とりどりのネオンが連なる市場の人いきれに紛れこむ。

都市と人間が織りなす空間は過剰なまでに色彩と陰影でごった返していて、

わたしはその中に潜り込むようにシャッターを切る。  

ところが、帰ってから写真を眺めてみるとそのような景色は見当たらない。

代わりに写っていたのは、色彩も陰影も褪せたまるで知らない架空の場所だった。

脈絡もなく断片的に切り取られた都市と人間の姿。

薄っぺらい虚構でありながら、もう一つの現実が繰り広げられているようでもある。

人々のこちらを見つめ返す眼差しの強さ、見ていない時のひどく虚ろな表情、張りぼてのような街のしつらい。

むしろ現実以上に現実が露わになっていたりする。

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